ゾクゾクします。未来を開発する可能性に。 スバル自動車部門 先行開発 斎藤 正容 技術開発部 (2008年入社)

走りを極めれば安全になるって、どういうこと?

学生時代、交通安全に関する研究をやっていました。電気電子専攻にしては珍しいと思います。警察と地元企業と共同で取り組んだのが、高齢歩行者の事故を減らすための改善プロジェクト。擬似的に歩行環境を作り、実際に歩いていただき、高齢者の能力を診断する装置を開発して警察に提供しました。研究を通じて、歩行車側の視点だけではなく、自動車側の安全性にも興味をもちました。各社いろんな安全技術がある中で、特に興味を持ったのが、「走りを極めれば安全につながる」という思想を持つスバルでした。当初、僕が希望した配属先は、EyeSightに関連した分野でした。しかし、実際に配属されたのは、車の運動性能の先行開発だったんですけどね(笑)。まったく別分野。だから、まさかここまでのめり込むとは、当時は想像できなかったですね。現在僕が取り組んでいるのは「動的質感」といって車が走っている状態の質感を高める先行開発の仕事です。動的質感には、操縦安定性や、乗り心地、振騒、ブレーキ、動力・ドライバビリティなどに分解されるのですが、その中でも「乗り心地」を専門に取り組んでいます。次のインプレッサ、次のレガシィの乗り心地をより高めていくにはどうしたらいいかと。少し先の未来を開発する。これが、とても難しくて、とても奥深くて、面白い仕事なんです。

突き詰めれば、突き詰めるほど、良くなる。面白くなる。

先行開発というと、なんだか黙々としているイメージかもしれませんが、実際はその逆です。車に計測器を積んで、機械をいじって、その傍らで解析して、計算式を書き出して、と体を動かしながらの仕事。緊急でアメリカに呼ばれたこともありました。当時のフォレスターの乗り心地に問題があるということで、ダンパーという車の振動を減衰する装置の担当である僕が呼ばれたのです。あらかじめ日本ではクリアできた基準が、アメリカではクリアできない。なぜだ。原因を探りながら、ダンパーの構造を変えてみたり、減衰力と呼ばれる数値を変えてみたり、試行錯誤を繰り返す。アメリカの道路は日本よりも荒れているので、フィーリングも全く違う。1週間の滞在の予定が、延長して2週間の滞在になりながらも、現地のサプライヤーも一緒になってクリアしました。それから、新しい技術への挑戦もあります。次のインプレッサ、レガシィに向けて、乗り心地と操縦安定性をより高いレベルで両立することを目的に、ワンランク上の乗り心地を目指して開発しています。例えば、通常のダンパーではなく、セミアクティブサスペンションといって、車の挙動を見ながら動く、制御サスペンションの開発です。話はそれますが、ダンパーって、シンプルな構造に見えるかもしれませんが、突き詰めれば突き詰めるほど良くなっていく面白いパーツなんです。チューニングを重ねれば重ねるほど良くなる。オイルの種類。バルブの穴の形、摩擦の度合い、全体の筒やブラケットの剛性、それぞれの素材。これらの要素を少し変えただけで、性能がぐんと変わる。仮説を立てて検証して、狙い通りの結果が出た時なんかは、たまらなく嬉しいです。

こんな乗り心地はなかった。新指標を開発してみたい。

今後はさらに乗心地の性能を高めていかなければいけないと考えています。例えば、1つの目標として第三者評価でエクセレントと呼ばれる最高評価を獲得し続けていきたい。でも、それだけを追い求めるのはつまらないなとも思っています。現状はどの会社もベンチマーク車ありきで開発している場合が多いんですね。この車のこのレベルは越えようと。そうした追いかける挑戦もいいけれど、別のモノサシの新技術にも挑んでみたい。「スバルとしてこういう性能を目指すんだ」という新指標を開発したい。スバルが考える最高の乗り心地の姿ってなんだ。新しい答えを出したい。たとえば、こういう発想もあるんです。現在は振動をなくすための乗心地開発をしていますが、振動をなくすという発想ではなく、心地よい振動を与えるという発想もあるんじゃないかなと。たとえば、振動をグラフ化したとします。人間にとって心地いいと感じる振動波形と、心地よくないと感じる振動波形ってどんなものがあるのかなと考える。波形の振幅、周波数、形によって、様々なんですよね。実際に加振台の上に乗って実験してみたりもします。自分がまさか、振動波形について考えるなんて思ってもみなかったですけどね。ダンパーだってそうです。構造も仕組みも何も知らない人間でしたから。合わなかったら異動願いを出そうかなくらいの気持ちではじめたのに、今、こんなに夢中になっている。自分の考えを型にはめないように、柔らかく大きく考える。そんなエンジニアでありたいと思っています。

朝8時の始業から30分間は、部署内のコミュニケーションタイム。各自が現在の仕事内容や進捗を報告。その後、デスクでメールを確認。日によって異なるが、自分が開発した部品を実際の車に載せてテストをする実車計測をすることが多い。試験の準備もすべて自分で行う。準備に3~4日かかる場合もある。

PROFILE 斎藤 正容 SAITOU MASAHIRO

スバル自動車部門  先行開発 技術開発部

2008年入社。工学部電気電子学科卒。学生時代は歩行者側の観点から交通安全を研究。入社して変わったことは、とりあえず実行してみようとより積極的になったこと。仕事のポリシーは仮説を持ってよく考えることと、他部署の人と仲良くなること。

Close