膨大な数の失敗が、EyeSightの未来をつくる。スバル自動車部門 アイサイトシステム 真壁 俊介 車両研究実験第4部 主査 (2008年入社)

託される責任。だからこそ魂が込められる。

中学の頃からラジオが好きで、電波に興味を持ったことがきっかけとなり、学生時代はレーダーの回路設計の研究をしていました。ところが大学時代に車にハマってしまった。友人がレガシィに乗っていて、一度乗せてもらったのですが、その乗り心地に感動したんです。ターボの痛快な加速と走行安定性。すべてが異次元。また当時、車にもレーダーが使われ始めており、自分の専門が活かせることを知って、さらに興味がわきました。そこで就職活動ではスバルとラジオ局の2社のみを受け、最終的に車にハマるきっかけをくれたスバルに決めました 。スバルに惹かれたもう一つの理由は「自分の魂を込めたものをつくれる」こと。スバルは、他社に比べ一人の技術者に任される範囲がかなり広い。だからこそ一人ひとりの想い入れも強くなる。そんな想いを持った社員の方々を見て、なんて楽しそうなんだと感じたのを覚えています。スバルに入社を決め、最初に配属されたのは、独自のレーダーを開発する部門。当時、レーダーはとても高価で一般に普及している自動車には搭載されておらず、低コスト化が課題ではありましたが、車載センサーとして有力視されていました。その頃はまだ、のちのEyeSightに搭載されるステレオカメラはやや劣勢の印象で、僕も「なんでまだやっているんだろう」と思っていました。ところが2010年、衝撃のニュースが。それは、レーダーの開発をやめるという経営判断でした。僕のレーダー人生も終わる。正直、ショックでした。しかし、不思議と長く落ち込むことはありませんでした。周りには同じ目標に向かう仲間がいたからです。自分が魂を込めて生み出すものは何であろうと、それがお客様の安全安心につながるのなら、という軸が皆にありました。異動先のEyeSight開発部署にもすぐに打ち解け、僕は新たな目標に向き合うことが出来ました。

画面を睨み続けて400時間。EyeSight ver.3の舞台裏。

仕事はいわゆる実験屋さん。その中でも、僕のチームはステレオカメラの画像処理を担当しています。EyeSightには、どんな環境下でも求められる機能を発揮するために、様々なソフトが組み込まれているわけですが、そのためには膨大な量の検証実験が必要です。まずEyeSightの機能は「物を正しく見る」ということが基本にあります。車を車として見る。白線と雪路面の違いを見る。そのためには、間違いを間違いだと教え、限界であれば限界だと通知するように教えなければいけない。誤作動を限りなくゼロにするというのが、僕たちの目指すところです。2014年発売のver.3の時は大変でした。ある大きな問題が生じて、ソフトウェアの変更では間に合わず、ハードウェアの変更を強いられる事態に。ハードウェアを変えても画像としてきちんと映し出されるのかどうか、再検証が必要になったのです。しかし、そのためには合計400時間という動画を1ヵ月で確認するプロセスが必要でした。人の命を預かる機能ですから、手を抜くわけにはいきません。気合いでやり抜きました。途中何度も心が折れそうになりましたが、やりきった時の達成感は格別だったことをよく覚えています。この確認も含め、合計の確認時間は約1万時間に及びました。その後無事にver.3がデビュー。大ヒットにつながりました。「売れると嬉しいですか?」と聞かれることがありますが、その時には既に次のミッションに向けて走り出しているので、その瞬間の出来事に一喜一憂するよりも、また新たな目標達成に向けて仕事にのめり込んでいる、というのが正直なところですね(笑)。

若い人に「大きい仕事」を任せてくれる会社。

現在は、すでに次世代のカメラの開発に着手しています。ver.2、ver.3で事故を減らすことはできた。全ての事故を無くすには、やるべき事は、まだまだたくさんある。しかし、本気で目指せば目指すほど、失敗はつきもの。たとえば、フロントガラスの汚れを検出し、勘違いを防ぐソフトを開発したものの、効果が得られなかったり。失敗が多すぎて、覚えていられないほどです。それでも、やらないことには進歩はありません。世間が注目している自動運転は通過点でしかなく、事故ゼロの社会を早く実現するためにも、ステレオカメラのさらなるポテンシャルを引き出していきたいと思っています。入社してからの8年間を振り返って思うことは、若い人に大きい仕事を任せてくるなぁということです。聞いていた通りでしたが。でも、いつしかそんな「無茶振り」にも慣れてきて「またきたか!」と思える余裕が出てきました。楽しいですね。僕はもともとコツコツタイプ。主張するタイプじゃない。スバルに入社して、積極的になったと思います。できれば、ずっと1人でソフトを組んで黙々と仕事をしたいと思っていたのですが、気がつけば真逆の状態に。今は、8名の部下を持ち、チームを率いています。私が指導や判断の際に大事にしているのは、シンプルに考えること。たとえば、問題が発覚した時に、真っ当なアプローチでいかないとあとで辻褄があわなくなる。小手先のことをやって少しくらいは調整できても、後々ギャップが広がると大変です。これも、失敗してきた経験があるからこそ思うことなんですけどね(笑)。チームでの仕事は難しい面もありますが、やりがいもありますね。今はみんなで成し遂げるという新しい喜びを発見できた。この先、何を発見できるのか。とても楽しみです。

8時から30分ほどチームミーティング。誰がどんな作業しているか、危険な作業はないか、共有・確認する。その後は、個々のメンバーとのミーティングや、設計部署やサプライヤーさんとの打ち合わせ。打ち合わせがない場合は、開発業務。その中に走行試験も含まれる。1~2週間ほどまとまった時間をとり、降水量や降雪量が多い場所など公共のエリアに行きデータの取得を行うことも。午後5時からは、自分の仕事。メンバーがつくったソフトウェアの見直しや、修正をしたりしている。

PROFILE 真壁俊介 MAKABE SHUNSUKE

スバル自動車部門  アイサイトシステム

2008年入社。工学部電気電子工学科卒業。東京事業所のスバル技術研究所に配属。2010年に群馬製作所の現在の部署に異動。三鷹から太田に転勤後に、現在の奥様と出会い結婚。「3台分の車をとめることができる、広い駐車場付きの家に住める点が群馬の最大のメリットです」と笑顔で語る。

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