CEOサステナビリティメッセージ

変革をリードする人財を育て、
「笑顔をつくる会社」の実現を目指す

代表取締役社長 CEO
大崎 篤

世界最先端の「モノづくり」と「価値づくり」へ

自動車産業が100年に一度という大変革期にあるなか経営のバトンを引き継ぐことに、身の引き締まる思いです。
これまでSUBARUでは、「笑顔をつくる会社」の実現に向けて、「SUBARUらしさ」を進化させ、様々な改革に取り組んできました。「組織風土改革」や「品質改革」にはゴールはありませんが、SUBARUの基盤になってきていることを実感しています。
また、不透明で非連続な変化が起こる時代において、私たちはこれまで競ってきた同業他社のみならず、異業種のまったく新しい価値観を持った企業と競い、凌駕していかなければ生き残れない状況を迎えています。
こうした状況を踏まえ、これまで取り組んできた「SUBARUらしさの進化」をステージアップさせて、スピーディーに推し進め、世界最先端の「モノづくり」と「価値づくり」を狙っていきます。「モノづくり」においては、製造・開発・サプライチェーンが一体となった“ひとつのSUBARU化“を進めることで、高密度なモノづくりを推進し、開発日数半減、部品点数半減、生産工程半減を実現する「モノづくり革新」を進めます。「価値づくり」については、お客様、販売店、SUBARU、そして地域社会の中心にある商品において、SUBARUの提供価値である「安心と愉しさ」をさらに進化させていきます。この「モノづくり革新」「価値づくり」へのチャレンジを「2028年までの今後5年間でやりきる」ことが新経営体制の決意です。

不安定な状況下でのベクトルを合わせた取り組みの推進

2022年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が縮小する一方で、ロシア・ウクライナ情勢をめぐる混乱の長期化やエネルギーコスト上昇などの様々な環境変化が発生し、不安定な状況が続きました。
そうした中でも、中期経営ビジョン「STEP」の重点取り組みである「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUらしさの進化」の3つの項目については、改革を着実に進めてきました。CSRの取り組みについても、2020年4月に制定した「SUBARUグローバルサステナビリティ方針」のもと、CSR重点6領域の取り組みを加速させていますが、「一人ひとりの人権と個性を尊重」することを重要な経営課題と捉え、「人権方針」も同時に制定しています。この方針を基にビジネス上の人権リスクを特定し、その対応策を策定する「人権デュー・ディリジェンス」を2020年度から2021年度にかけて人事・調達領域にて実施しました。2022年度は対応策を確実に実行するフェーズに移行し、SUBARUだけでなくお取引先様と共に様々な対応策を進めています。
ベクトルを合わせて大きな推進力を生み出すことはSUBARUの強みです。皆が同じ方向を向いて最大限の力を発揮するために、現状の問題や課題を「見える化」し、進むべき方向性に対して「共感」を生み出していきます。この強みを活かして、SUBARUグループだけでなく、サプライチェーンも含めたビジネスパートナーと共に、CSRや人権尊重の取り組みを進めていきます。

CSR重点6領域の取り組みを加速

CSR重点6領域については、「安心」「ダイバーシティ」「環境」の領域で取り組みが加速しました。

「安心」については、「STEP」の最重要テーマの一つとして掲げた「品質改革」を3つの切り口で活動を継続して実施し、SUBARUの基盤として位置付けています。切り口の1つ目は、「品質最優先意識の徹底と体制強化」です。実際に発生した不具合事例や再発防止策などを紹介する「品質キャラバン」を国内のみならず北米の生産子会社でも開催し、SUBARUグループ全体で品質意識を啓発しています。2つ目は、製品の量産における不具合の流出を防止する「つくりの品質の改革」です。2022年8月からは、より厳格な完成検査を実施するための「新完成検査棟」を稼働させ、各国法規への適合検査やお客様の使用方法などに基づいた品質評価を行っています。同検査棟は業務に従事する従業員の声を聞き、その負荷軽減も考慮した構造や仕組みとすることで、従業員にとっても「安心」して働ける場を実現しています。3つ目は、初期の検討段階からお取引先様も含めた新型車開発上流からの「生まれの品質の改革」です。開発の最上流から生産・物流まで一貫した品質確保に取り組むことで、市場処置の件数や台数、品質関連にかかる総費用は着実に減少、2023年には上記3つの品質改革活動を織り込んだ「クロストレック」を市場に導入しました。「品質改革」はSUBARUブランドの根幹であり、今後も手を緩めることなく取り組んでいきます。
また、SUBARUは「2030年に死亡交通事故ゼロを目指す※1」ことを掲げており、「安心と愉しさ」を支える技術の強化に取り組んでいます。従来の「アイサイト」や「スバルグローバルプラットフォーム」に加えて、2020年に「アイサイトX」を市場に導入、2022年にはアイサイトの能力を強化した「広角単眼カメラ」を北米市場向けの「アウトバック」、国内市場向けの「クロストレック」と「インプレッサ」に採用し、予防安全性能を強化しました。今後もさらなる運転支援システムの高度化による事故の回避・軽減を実現し、自車起因の事故を減らし、他社起因による事故に対してもAACN※2などの技術を加えることにより、死亡交通事故ゼロへ向けた取り組みを強力に進めていきます。

※1
SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車等の死亡事故ゼロを目指す。
※2
Advanced Automatic Collision Notification(先進事故自動通報システム)

SUBARUグループは、従業員の多様性を尊重することが商品の多様性にもつながると考えており、CSR重点6領域の「ダイバーシティ」を従業員と商品の両方の側面から捉えています。「従業員のダイバーシティ」では、多様な人財がそれぞれ活躍できるよう、働きやすい職場環境の整備や適材適所の人財配置および人財育成に努めてきました。
人財育成においては、自律的なキャリア開発に向けて「個の成長」を後押しする仕組みや環境の整備を進めており、幅広く学べる機会を提供しています。女性活躍推進にあたっては、「2025年までに女性管理職数を2021年時点の2倍以上」とする目標を掲げて取り組みを進めており、管理職を目指す女性従業員を対象とした各種研修や女性役員との対話会などを実施しました。「商品のダイバーシティ」では、SUBARU初のバッテリーEVである「ソルテラ」を2022年に本格的に市場導入、電動化対応に加えて「SUBARUらしさ」を意識した高い総合安全性能を実現しました。

「環境」については、SUBARUの事業フィールドである「大地と空と自然」が広がる地球環境保護を、重要なテーマと捉えています。2023年4月にはTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)への賛同を表明、脱炭素社会の実現に貢献すべく、長期目標およびそのマイルストーンとして中期目標を設定し、目標達成に向けて取り組みを進めています。それを早期に実現するために、SUBARUという会社の舵をバッテリーEVに切り、経営資源をバッテリーEVに集中します。
電動化計画については、2030年時点での電動車販売比率をバッテリーEVのみで50%へ引き上げ、120万台の全世界販売台数に対して60万台のバッテリーEVを販売するという目標に大きく見直しました。加えて、2028年末までに合計8車種のバッテリーEVを投入しラインアップも充実させます。
また、その電動車販売を支える生産体制については、2023年5月に日本国内工場のバッテリーEV生産キャパシティを20万台から40万台に増強すると発表しました。
さらには、日本国内工場で生産予定のトヨタハイブリッドシステムを搭載した次世代e-BOXER車両およびバッテリーEVについては、米国においても生産を開始することにします。これにより、全世界の工場生産キャパシティは120万台レベルを持つこととなります。電動化への過渡期においては、自動車に対する環境規制やマーケットの動向を注視しながら、日米工場の生産体制再編を活用して柔軟に対応し、ある程度方向性が見えてきた段階で一気に拡張していくという「柔軟性と拡張性」の視点で、先行きの見えない困難な時代を乗り切っていきたいと考えています。

変革をリードする人財を育て、お客様や地域社会の皆様に愛される存在になる

「SUBARUらしさ」を生み出すのは、多様な価値観を持った人財があってこそで、人財はすべての基盤だと考えています。さらに、不透明で非連続な時代を生き残り、他社を凌駕するには「変革をリードする人財」をしっかりと育て上げて活躍の場を創出することが重要と考えています。このことは専従役員として関わってきた労働組合時代に強く認識したことでもあります。「変革をリードする人財」を積極的に育て、多様な価値観を持った人財が多様な場で協業し、お互いを寛容に認め合う風土を醸成し、SUBARUの競争力を高めてクルマの多様性や強いモノづくりに繋げていきます。
SUBARUはお客様の人生に寄り添うクルマづくりをしてきました。特に、米国の販売子会社では「Love Promise」という活動として実を結び、クルマを通じてお客様、販売店、SUBARUそして地域社会の人と人を強固に繋げる取り組みにまで発展しています。この取り組みこそが「SUBARUの社会と未来への価値貢献」であり、これを守りさらに取り組みの輪を拡げていくことで、「笑顔をつくる会社」の実現を目指し、これからも皆様から愛され、誇りに思ってもらえる存在であり続けられるよう尽力していきます。

代表取締役社長 CEO
大崎 篤