技術に流れる2つの哲学。

水平対向エンジンを語ることはスバルの理想のクルマを語ること。

水平対向エンジンについて語るまえに、伝えておきたいことがあります。クルマと言えばエンジン。クルマの命とも呼ばれるエンジン。エンジンはクルマづくりにおいて最も重要視されるべき部分だと言われています。しかしながら、エンジンだけでクルマは走るのかというと、そういうわけでもありません。クルマは3万個もの部品でできていると言われますが、それぞれの役割や機能が複雑にからみあい連動しながら総合的に動いています。その中でも、どのエンジンを採用するのかという決定は、クルマづくりの方向性を決めるといっても過言ではないくらい重要なこと。それくらいの影響力を持つのが、エンジンという部分なのです。現在、スバルがつくるクルマには、すべて「水平対向エンジン」と呼ばれる形式のエンジンが搭載されています。ここに、スバルのこだわりがある。スバルが目指す理想の走り、理想の安全性を、もっとも合理的に、高いレベルで実現するためには、水平対向エンジンがベストである。そう考えているからです。水平対向エンジンを語ることは、単なるエンジンを語ることではない。スバルがどんなクルマをつくりたいのか、という目指したい理想のクルマを宣言することでもあるのです。

人間の微細な感覚までも吸収して進化してきた現代の車。

スバルの理想のクルマは、スバル単体で考えるものではありません。私たちのモノづくりの中心には、お客様がいる。お客様が理想とする生活・人生がある。そこには、運転する人間の微細な感覚もある。たとえば、人間はちょっとした感触で、快適だと感じたり、小さな不便で不快を感じたりする生き物。現代の発達したクルマの技術には、そうした人間の快・不快といった人間の感覚によるニーズが、長い年月をかけて反映されてきています。つまり、いいクルマをつくろうと思ったら、エンジンそのものが立派であることも大事ですが、エンジン以外の部分との連結、それによるパフォーマンスの向上が、とても重要になるのです。たとえば、エンジンの動力をタイヤにスムースに伝える仕組みだったり、人が不快に感じる振動を伝えない仕組みだったり、クルマが曲がる時の車体がゆがみを吸収する仕組みだったり。もちろん、万が一衝突した時に人を守る、そもそも衝突しないようにする仕組みといった安全性能や、排気ガス規制の基準をクリアし、より少ないエネルギーで走るなどの環境への影響を考慮した環境性能といった、社会的・経済的な様々な時代のニーズもふくめて吸収しながら、今日この瞬間も進化し続けています。エンジンを考えることは、クルマに関わる進化の今と未来を考えることでもあるのです。

人間にたとえて紹介したい、水平対向エンジンの特徴。

ボクサーがパンチを繰り出すように動く仕組み。

水平対向エンジンは、水平かつ左右対称にピストンを配置する独特のレイアウトで成り立っています。この構造が生むメリットのひとつが、振動の少なさ。直列エンジンやV型エンジンのピストンが上下方向に往復するのに対し、水平対向エンジンはまるでボクサーがパンチを繰り出すように横方向に往復。ピストン同士が互いの慣性力を打ち消しあうため、振動を抑えることができるのです。

重たい荷物は、真ん中に背負うほうが、走りやすい。

“フラットエンジン”とも呼ばれる水平対向エンジンは、文字通りピストンをフラット(平ら)に配置する構造上、一般的な直列やV型よりもエンジン全高が低く、「低重心」に。クルマの走行安定性には、重量物であるパワーユニットの重さと、重心の位置が大きく影響します。パワーユニットが軽く、重心が低いほどクルマは安定し、ハンドリング性能も高まります。重たい荷物は、片方の肩に背負うより、真ん中に背負うほうが走りやすいのは、クルマも人間もおなじです。

腰を低く構えると、体が安定する。踏ん張りが効く。

力士が四股を踏むように。膝を曲げ、腰を低く構えることで、地面にしっかり足が付き、踏ん張りがきく。それは、クルマも同じです。水平対向エンジンはその全高の低さと縦置きの構造を活かし、フロントのサスペンションアームをエンジンとトランスミッションの間に配置。サスペンションのストロークを大きく確保できるため、悪路やコーナーでもしっかりと踏ん張る“強い”足回りを実現。さらに全高が低い水平対向エンジンは衝突安全性能にも貢献。前面衝突時にエンジンがフロア下に潜り込むことで、エンジンがキャビンに侵入して乗員を傷つける危険性を低減しています。

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